自灯明

2022年5月8日

  • 至誠独白「わが魂の遍歴」第一章 湯原先生との邂逅

    わが魂の今に到る遍歴を綴る。

    それは早稲田中学に入ってから英語教諭湯原俊綱先生に出会ったことから始まる。

    先生は敬虔なキリスト教徒であられたが又独自の瞑想術を会得されていた。

    初めてご自宅にうかがった折に急に瞑想の形をとられ、私の胸の内や将来のことを語られた。私は驚愕しそして私淑しそれより私の先生詣でが始まった。先生が68歳で逝去されるまで25年以上延々と続いた。

    先生はクラシック音楽をこよなく愛された。そして絵画を含め芸術全般にも造詣が深かった。さらに先生はオーディオやステレオ装置にも造詣が深くお部屋には何段にもアンプやスピーカーがセットされ美しい音響を奏でていた。私のベートーベンやモーツアルト、ブルックナーへの愛聴敬愛は先生から啓発されたものだった。

    先生はまた大変な読書家であられた。中でもドストエフスキーを推奨されて古今東西の最高の作家と位置付けられた。人間の内面に見る葛藤や相剋の様をこれほど深められ無条件に愛を持って俯瞰された作家は唯一無二であると熱をもって語られた。

    所狭しと山積みされた書籍やレコードの山に若き私は圧倒されたのである。

    そして先生からお借りしたパラマンサ・ヨガナンダ著「あるヨガ行者の一生」という本が私の人生を決定的づけた。ヒンズー教の聖者が宇宙や人生の真理を縦横に解き明かした本だった。後日先生より卒業記念に頂き私の座右に書となり家宝となった。中学時代私はかくも変わり者だったのである。

Posted by 築和 光坊